デリバティブ偏愛家の日記

弱小投資家の相場備忘録

2018/5 第3週 米金利分析

データは18日引け値まで。今週からスワップスプレッドの分析を追加した。詳細は後述。

 

 1.イールドカーブ

縦軸に利回り、横軸が満期までの日数。指定日は前回記事を投稿した時の基準日(5/11)の水準。 

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全体に金利上昇。

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2.中期イールド

主要年限(先物が存在する年限)の中期推移。

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長期を中心に一回跳ねた。

3.中期スプレッド

主要年限同士の差分(スプレッド)。計算式は5Y-2Y。

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4.中期バタフライ

バタフライとは、短い年限と長い年限に買い(売り)、その間にある年限を売る(買う)取引手法で、イールドカーブの形状に注目するもの。「2-5-10」の計算式は以下。「2-5-10」が左軸、「5-10-30」が右軸。

5Y×2 - (2Y + 10Y)

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変化に乏しい状況が続く。 

 

5.短期イールド変化

100営業日(約5ヶ月)前を基準1として、そこから各主要年限の金利がどう変化したか。

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6.短期10Y vs 5-10

左軸に10Y金利、右軸が5Y-10Yスプレッド。データは過去100営業日分。

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7.長期10Y vs USDJPY

過去1,000営業日の10Y金利(左軸)とUSDJPY(右軸)の推移。

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8.短期10Y vs USDJPY

データは全く上と同じで、期間が100営業日(200営業日のグラフは廃止)

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9.短期為替相関

主要年限それぞれと、USDJPYの相関係数の推移。相関係数は前日比を過去20営業日分使って計算。

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11.中期インプライドボラティリティ推移

左軸が10Y金利、右軸がその先物オプションのIV。

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先週には年初来安水準だったIVだが、しれっと金利は跳ねたのであまり市場の織り込みは正確でない印象。

 

12.10Yスワップスプレッド推移

左軸が10Y金利(10Y国債利回り)、右軸が10Yスワップスプレッド(10Yスワップ金利 - 10Y国債利回り)。

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緩やかに金利上昇に合わせてスプレッドもワイドになっている。

 

13.5Y、10Yスワップスプレッド推移

左軸が5Yスワップスプレッド、右軸が10Yスワップスプレッド。

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10Yのワイド化に対し、やや5Yは出遅れ気味。

 

総括

 CMEにしれっと上場しているスワップ先物が案外夜間だと使えることが発覚したので、急遽久々にスワップスプレッドの分析をすることにした。先物自体の詳細な説明はこちら。

www.cmegroup.com

そもそも「スワップ金利」という単語自体、個人投資家だとFXのスワップレートの方が知られているので誤解を招きがち。これは近々「銀行の運用部門のお仕事」シリーズで紹介しようかと思っていたが、先に簡単に説明してみる。金利デリバティブの最もシンプルなものとして、一定期間、変動金利と固定金利を交換する「金利スワップ取引」がある。

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 ここでは陶濬Xと二階堂盛義Y間で金利の交換を考える。期間は10年とする。Xは変動金利であるドルLIBORを10年間Yに払う(LOBIR自体は日次で変動するが、3ヶ月に一度その時の発表されている金利を支払う)。逆にYは固定されたn%という金利をXに3ヶ月に一度の頻度で10年間払う。実際に払い込む金額は、想定元本と呼ばれる金額があり、それに金利を乗じた額となる。

 さて、これだけだと「この二人は何が楽しくて口を開けてるの?こんな取引を?」となるが、腹の内では、

  • X:「変動金利は今後下がるだろう。そうなれば固定で払い続ける二階…いやYは損となる。」
  • Y:「変動金利?上がるに決まってんじゃん。愚か者である陶…ではなくXに固定で低い金利を払い続けるよ。」

このような相場観がある(ヘッジ取引のケースも多いが)。結局は変動金利がどうなるか予想するゲームという訳。

 で、ここで当たり前のようにポイントとなるのは「nはいくらなのか」という話だろう。そこでX目線で別の取引を考える。

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  1. Xはインターバンク市場から、LIBOR金利を支払うことで資金を調達する(借り入れ金利LIBORと同額の借金とほぼ同義)。
  2. Xは借り入れた資金を元本に、満期10年の米国債を購入。
  3. Xは米国債の利子である年m%を固定で受け取ることが出来る。

 この取引、よく見ると最終的には調達に払う変動金利と、国債から得られる固定金利の交換になっていることにお気付きだろうか?そう、Xは変動金利LIBOR)が今後上がらないことを見越して変動金利を払って、10年間固定金利を受け取る判断をしており、これは先の金利スワップと同じキャッシュフローになる。

 ということは物凄く雑な議論をすると、先のn%と今回のm%は同値でないといけない(裁定の機会が生まれるので)。nのことを「スワップ金利」ないし「スワップレート」と呼ぶが、これは一応国債の利回りと一致するはずである。

 ただし本来そうはいかない。ここではYが10年間破綻することなく律儀に固定金利を支払い続けることが想定されているが、二階堂盛義ファンの皆さんには申し訳ないが、米国債と比較して少なからず相対的に高いデフォルトリスクが存在する。となると、このスワップ金利国債利回りより信用リスク分高い、という説明が出来る。ちなみに上のグラフで紹介した「スワップスプレッド」とはまさにこの「スワップ金利国債利回りの差」である。

 …となると、スワップスプレッドは恒常的にプラスで推移しないとおかしい。一応スワップ取引の主体は銀行や企業なので二階堂盛義という個人よりは信用リスクは低いが。ただ、チャートを見るとそうでもない。

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 これは2000年末くらいからのスワップスプレッド(5Y、10Y共に左軸)と、10Y金利(右軸)の推移であるが、普通にスプレッドがマイナスに突っ込んでいるケースがある。国家よりも企業の方が信用リスクが低いという意味不明な状況になっているが、この原因には諸説あるようで、

  • 国債は発行量が決まっているので、市場の流動性に偏りが発生する可能性があるのに対し、金利スワップ取引は理論上無限に可能なので需給の違いが引き起こす
  • 一部の債券のヘッジに金利スワップを使うケースがあり、それにより国債対比で歪みが生まれる

 ちなみに円債だと10Yのスワップスプレッドが日経平均相関係数が高い、という話がある。これまた原因が諸説あるが、日経平均を参照するノックアウト条項付き債券(日経平均リンク債)のヘッジに金利スワップが使われており、日経平均を見つつヘッジを行うのでスプレッドが連動する、というもの。

 …全然に"簡単に"説明していないが…。とりあえず今回はここまで。