デリバティブ偏愛家の日記

弱小投資家の相場備忘録

IG証券の個別株CFDの価格が不安定過ぎる

この地味なブログ、やっとアクセス数が200を超えました。ありがとうございます。デリバ亡者です。

 

さて、最近日本の特定の個別株でロングショートを組むロジックを検証しているのだが、そこでいざ取引する時に証券会社の信用口座でやるか、個別株CFDでやるか考える必要が出てきた。そこでIG証券の個別株CFDは、小口から高いレバレッジで取引できるので魅力的なのだが、題名の通り、価格の動きが不安定過ぎるので、その原因を探ってみた。

 

個別株CFDとは

IG証券自体知らない方もいるだろうから、HPへのリンクも載せておく。

www.ig.com

個別株CFDとは、上場する個別株をFXのように少額の証拠金で取引できる、というものである。信用取引との違いはいくつかあるが、列挙すると

  • レバレッジが高い(CFD:約10~20倍、信用:3倍)
  • 信用と異なり、全て返済期限が無い(信用取引も無期限のものはある)
  • 取引価格は業者が生成しているケースもある(信用は取引所の価格と完全に一致する、というか取引所で取引されているそのもの)
  • 最小取引単位が信用(ないし現物)よりも小さいケースがある
  • 原則、板が存在しない

主要な点は以上だろうか。FXのイメージで株が取引できるので、FXから入る投資家でも取っつき易い。

 

どう不安定なのか

これは見ていただいた方が早い。

f:id:plnjpy:20171024111015j:plain

「どこの新興市場かな?」「マ○オの土管では?」「竹林では?」という声が聞こえそうだが、証券コード8604、野村ホールディングスである。チャートの時間を見れば分かるが、ごく普通の東京時間である。勿論現物市場(東証)はこんな竹林のようなチャートではなく、660前後をウロウロしているだけの状態であった。これが過疎化の進んだJASDAQ銘柄なら分からなくもないが、東証一部上場で日経225採用銘柄でこの状態とは何事だろうか。

このチャートはAsk(買値)のチャートなので、状況としては極端にスプレッドが広がる(Askが跳ね上がる)のと、元の状態に戻るのを繰り返している模様。全てのCFD銘柄がこういった状況ではなく、一部の銘柄に限られている。下のプライス一覧を見ていただければ分かるが、他の銘柄は東証と比較してもぶっ飛んだスプレッドになっていることはない。

f:id:plnjpy:20171024112232j:plain

(仮に野村をショートしていた場合、未決済損益を買値で評価すると、いきなり-25%近い評価損になる計算)

 

参照している市場に東証が含まれていない

先程のリンク先に記載されているが、IG証券の日本の個別株CFDでは、参照している取引所が「Chi-X(チャイエックス)」と「ジャパンネクストPTS」の2つであり、メインの東証が含まれていないのだ。これら2つはPTS(私設取引所)と呼ばれるもので、個人投資家には若干馴染みが薄いが、少し前までは夜間取引のために複数のネット証券でも接続していた。

jp.chi-x.com

ja.japannext.co.jp

 

IG証券はプライスを生成しているのか

CFDのプライス生成は業者により手法が異なる。参照する市場の板を見ながら、ヘッジ取引のマーケットインパクトを考慮したり、マリー率見合いでスプレッドを狭くしたり、手を加え始めると色々できる。しかしながらIG証券の場合は「お取引は該当する証券取引所における銘柄の実際の売値/買値にて執行されます」としており、生のプライスを配信し、そこに約定手数料を別途徴求するスタイル。どうやらプライス生成は基本的には行っていない模様。

 

どちらかの市場が過疎っている?

参照する市場が2つあり、まともなプライスとぶっ飛んだプライスが交互に配信される状況から考えられる仮説は、「まともなプライスを出している市場Aが時折流動性不足で参照先から外れ、恒常的にぶっ飛んだプライスを出している市場Bが参照先となる→市場Aの流動性が復活すると再度Aが参照先となり、元のプライスに戻る」もしくは「市場A、Bのうち、Bは恒常的に死んでおり、流動性の低いAのみを参照しているので、Aの板状況に合わせてプライスがぶっ飛んだり戻ったりする」となる。少し検証してみる。

 

検証

PTSの気配情報

これは今回初めて知ったのだが、PTSの配信価格を比較できるサイトを日証協が運営していた。

PTS Information Network

ここで調べれば最良気配の情報を調べることができたので、野村ホールディングスの情報を見てみた。

f:id:plnjpy:20171024114127j:plain

最上段「SBIジャパンネクスト証券株式会社」の「売り気配750」。見覚えがある。そう、先程のぶっ飛んだプライスはこれが犯人のようだ。ジャパンネクストPTSにはJ-Market、X-Market、U-Marketの3種類の市場が用意されているが、IG証券が参照しているのはJ-Marketのようで、このタイミングだとチャイエックスの板が全く無い状態なのでJ-Marketが参照されることになる。

※このジャパンネクストPTSの3種類は、呼び値の幅や取引参加者、取引時間で差別化されている模様

 

ジャパンネクストPTSの板情報

これでは最良気配しか見えないので、板情報も気になる。チャイエックスについては知る術が見つからなかったが、ジャパンネクストPTSはSBI証券が接続していることもあり、サイトから調べることができた。

f:id:plnjpy:20171024114921j:plain

左側が東証の板、右側がジャパンネクストPTS(J-Market)の板である。PTS側は板も薄く、スプレッドも凄まじい。ただPTS側の現在値は東証に近いので暫く見ていたが、660(東証の現値付近)に一瞬指値が入ると即消える、という状態で、事実上マーケットメーカーが不在のようである。

実はSBI証券ではX-Market側の板も見ることができ、そちらも見てみた。

f:id:plnjpy:20171024115238j:plain

なんと、こちらの方がまともな板である。

 

他の銘柄は?

他にもぶっ飛んでいる例がある

これだけだと「野村のプライスだけ障害等で問題なのでは?」とも考えられるので、他の銘柄も見ていく。実はだいぶ前に任天堂(7974)を見たらぶっ飛んでいたので、ブラウザをそっと閉じた記憶があったので、また任天堂を見てみた。

f:id:plnjpy:20171024121653j:plain

任天堂の売値チャート)

絶叫しそうな下落だが、東証ではこんなことにはなっていない。時間帯がずれてしまうが、PTSの価格を見てみると、

f:id:plnjpy:20171024121818j:plain

こちらでもチャイエックスが不在のようである。

f:id:plnjpy:20171024121908j:plain

J-Marketはやはり板が薄い。単元株ずつしか板に乗っていないとは…

f:id:plnjpy:20171024122019j:plain

X-Marketの方がややましな状況。とりあえずスプレッドは東証と同レベル。

 

まともな銘柄もある

異常な状態にあるものだけ見ても状況を正確には把握できないので、正常なプライスが配信されている銘柄についても軽く触れておく。

今回調べたのは証券コード8411、みずほFG。

f:id:plnjpy:20171024120300j:plain

この銘柄はチャイエックスも機能している上、ジャパンネクストJ-Marketもほぼ同じプライスが出ている。

f:id:plnjpy:20171024120427j:plain

東証と比べると心もとないが、J-Marketの板もスプレッドは近い水準にある。

f:id:plnjpy:20171024120532j:plain

みずほに関してもJ-MarketよりもX-Marketの方が板が厚い。時間帯によって変わる可能性があるが(Xは夜間取引が無いが、Jにはある)、そもそもIG証券のCFDは東証の取引時間と同じなのでXを参照してくれた方がプライスが安定するのでは。

異常プライスが配信される銘柄とそうでない銘柄の基準は現時点では不明で、証券業界No.2の大和は普通のプライスなので、元々の東証での流動性に応じるものでもない様子。とは言え現在J-Marketでまともな流動性となっている銘柄が、今後も同程度の流動性を維持できるかは不確定なので、CFDを取引する際はかなり注意が必要である。

 

チャートを信用してはいけない

先程も触れたが、前にも任天堂のプライスが異常だったという件、この話には続きがあり、翌日見たら何も無かったかのように前日分は綺麗なチャートになっている、という事件があった(当日分はまた異常なプライスが出ていた)。どうやらIG証券側も異常レートであるという認識はあるようで、時間経過でチャートを修正していると考えられる。

最初に載せた野村のチャートを再掲すると、

f:id:plnjpy:20171024111015j:plain

これが11時くらいだろうか。で、同日12:30現在のチャートは、

f:id:plnjpy:20171024123536j:plain

 明らかに10時前後の異常レートが修正されている。

「こんなの詐欺だろ!!」と叫びたくもなるが、重要なポイントが一つ。

f:id:plnjpy:20171024123724j:plain

「チャートデータは参考レートです」の文言…

東証ならまだしもPTSの配信価格をヒストリカルで取るのは難しいので、唯一個人投資家が参照できる過去データがチャートである以上、これは困ったものである。ただ、竹林が竹林のまま表示されることよりも、そもそもプライスの参照先を、より流動性の高い東証やX-Marketに変更してくれればそれで良いのだが…CFDだと東証を参照できない理由は無いと思うのだが、何かあるのだろうか。ご存知の方がいたら教えていただけると助かる。