デリバティブ偏愛家の日記

弱小投資家の相場備忘録

BTCJPYとBTCUSDについて調べてみた

BitCoinも対円以外に対ドルで取引する取引所が存在する。両者の価格が乖離することがある、と聞いたので少し調べてみた。例によって今回も「サルでも勝てる仮想通貨投資必勝法」というような記事ではないので、そこはご了承願いたい。しかも、ややマニアックである(以下、BitCoin=BTC、ドル=USD、円=JPYと表記)。

 

分析に使うデータ

今回もQuandlからデータを取得している。対JPYはコインチェック、対USDはコインベースという業者である。

BTCJPY

www.quandl.com

BTCUSD

www.quandl.com

※原因は不明だが、対USDは一部期間(2016/12/7~2017/4/8)のデータが欠損している。困ったものだが、他の取引所のデータで埋めるとそれはそれで問題なので、今回はその期間は分析対象から外すこととしている。 

 

実勢為替レートで円転したBTCUSDとBTCJPYの乖離

まず気になるところはここであろう。効率市場仮説に従えは「一物一価」が成り立つはずで、別の取引所に上場しているBTCで、かつ通貨が異なろうが、その時の為替レートで両替すればBTCは、理論的には全て同じ価格になる。仮に乖離が発生しても、瞬時に裁定取引が行われるから、という話であるが、ご存知ない方もいるかと思うので軽く説明しておこう。それくらいは知ってるよ、という方は読み飛ばしていただきたい。

 

裁定取引の簡単な説明

仮に例えば以下の条件を考えてみる。

BTCJPY=400,000

BTCUSD=4,100

USDJPY=100

※取引コストはゼロとする

この状況であれば、

  1. BTCJPYでまず400,000円で1BTCを購入
  2. BTCUSDでその1BTCを売却($4,100入手)
  3. USDをJPYに両替($4,100×100=410,000円入手)

上記取引を瞬時に行えば、価格変動リスクゼロで40万円が41万円になる。このタダ飯状態は誰もが喜ぶので、皆がこぞってBTCJPY買い→BTCUSD売り→USDJPY売りを繰り返すことになる。そうすると自然とBTCJPYは上昇、BTCUSDは下落、USDJPYも下落し、下のような価格に落ち着く(この水準に落ち着くかはその時次第だが)。

BTCJPY=405,000

BTCUSD=4,050

USDJPY=100

 こうなるともう先程のようにBTCJPY買い→BTCUSD売り→USDJPY売りをしても利益が出ないので、ここで一旦落ち着くことになる。これは典型的な裁定取引の一種である三角取引と呼ばれるもので、その昔は為替取引で行われていた(USDJPY、EURJPY、EURUSDの三者等)。為替取引は電子化が進むにつれて高速で売買されるようになり、今ではほぼ三角取引で利益が出る場面は無い。

 

まずはBTCJPYとBTCUSDの価格推移を見る

裁定取引以前に、まずはそもそもの価格推移を確認しておく。BTCJPYが左軸、BTCUSDが右軸である。で、BTCUSDの謎の直線部分が、例のデータ欠損期間である。

f:id:plnjpy:20171003222928p:plain

 

実勢為替レートで円転したBTCUSDとBTCJPY

各営業日のBTCUSDの終値を、マネースクウェアが提供している為替レートの終値でJPYに変換し、BTCJPYとの差分をグラフにした。

  • 差分は(BTCJPY-円転後BTCUSD)/ BTCJPYで計算(つまり"乖離幅"ではなく、"乖離率")
  • 土日の為替レートは金曜の終値をそのまま使用

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乖離幅ではなく乖離率にしたのは、分析対象期間内であまりにBTC自体の値段が大きく変化しており、単純な幅で分析するのは問題ありと判断したためである。

2016年12月からの半年くらいからが気になるが、それ以前は基本的にBTCJPYが最大5%程度割高~ほぼ乖離率0%で推移していた模様。なので乖離率が+5%付近になればBTCJPY売り+BTCUSD買いで儲けられたが、2017年5月の乖離率大幅拡大で爆死している。逆サイドの乖離率-0.1%付近でBTCJPY買い+BTCUSD売りもまた、暫くは稼げたが、2017年9月に爆死する運命にあったようだ。実に恐ろしい。

 

爆死したくない

誰もがそう思うところではあるが、この2017年5月~現在にかけてのBTCJPY・BTCUSD間の乖離が大きくなる現象の原因は何だろうか。まあここで「日本の個人投資家が大量に入ってきたことで乖離が生まれ易くなった」というファンダメンタル的な答えは真っ当な気がするが、もう少し分析してみる。

 

ボラティリティの上昇と乖離率の上昇に関係はあるか?

誰もが思いつきそうな仮説である。確かにボラティリティが上がれば両者の乖離が生まれる場面も増えそうである。

ということでヒストリカルボラティリティ(HV)をプロットしてみた。過去60日の価格変化率の標準偏差で、年率換算されている。

f:id:plnjpy:20171003224800p:plain

…関連が見られない。

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X軸にボラティリティを、Y軸に先程の乖離率の絶対値をプロットしてみた。何の特徴も見られない。仮説に従えば、ボラティリティが高ければ高い程、乖離率の絶対値も大きくなるはずだが、そうではないようだ。

この手の裁定取引には、普通に取引する参加者に対して、少数派のアービトラジャー(裁定取引者)がいることで成り立つのであって、現状では裁定取引をやる人が少な過ぎて乖離幅が極端に広がる事象が起きてしまう模様。既に裁定取引をやっている人もそこそこいるのだろうが、この様子だと今すぐに参入する勇気は無い。

 

土日にUSDJPYの取引ができる!?

BTCが土日も取引できる、と聞いた時にまず先に思いついたのがこれである。

  • BTCUSD買い+BTCJPY売り=USDJPY売り
  • BTCUSD売り+BTCJPY買い=USDJPY買い

真面目にBTC自体を取引しろよ、という話であるが、筆者はあまり仮想通貨自体の将来性に関心は無い。土日にこれでUSDJPYの取引が可能となることの方が圧倒的に重要である。

 

どの場面で使うのか

経済指標は中国を除いて全て平日に発表されるため、土日に為替に影響を与えることは無い。それに対し、選挙や国民投票、要人発言、天災、某国のミサイル発射は土日だろうが関係無く行われる。こうした土日の重大イベントは月曜早朝の為替相場に大きな影響を与えるが、土日はイスラム圏以外金融取引が出来ないので、何も手が打てない。

そこで土日にUSDJPYの取引が出来れば、理論上、重大イベントを受けて先にポジションを仕込んでおいて、月曜の朝の為替市場の動きを先取りできる、という訳である。

 

BTCUSDとBTCJPYから計算される為替レートと、実勢為替レートの推移

とは言え、先程の計算ではかなり乖離が発生することになるので、BTCUSDとBTCJPYから計算される為替レートと、実際にFXで取引される為替レートの差を見ておく必要がある(以下、BTCJPY÷BTCUSDで計算される為替レートをCalc、実勢の為替レートをRealとする)。

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 最大20円近く乖離する等、なかなか厳しい状況である。まともに使い物になるのか…

 

土日の変化率を見る

まず考えられる理想的な流れとしては、以下の等式が成り立つことである。

X=Y

X:(日曜のCalc終値-金曜のCalc終値)÷ 金曜のCalc終値

Y:(月曜のReal始値-金曜のReal終値)÷ 金曜のReal終値

現時点ではあまり想定できないが、土日のCalcの動きがRealの動きを先取りする形であれば、X=Yが成り立つはずである。等式でなくとも、高い相関係数となれば先取り出来ていることに近い。

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X軸に上記Xを、Y軸に上記Yをプロットしてみた。全く無相関である。なるほど…

 

月曜の日中に乖離は縮小するか

流石に市場の成熟度からして、現状土日のCalcの動きがRealの先取りをしていると考えるのは難しいだろう。結果はまあ当たり前のものとなった。

では逆に土日にCalcは好き勝手に動くが、月曜にRealの動きを見て、それに寄り添う形になるのでは、と考えた。土日は為替を介する三角取引が不可能なのでむしろCalcとRealの間に乖離が生まれやすいのでは、との仮説である。仮説に従えば、日曜時点のCalcとRealの平均乖離率よりも、月曜のCalcとRealの平均乖離率の方が小さくなるはずである。計算してみた。

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…逆かよ。

 

そもそも土日のボラティリティはどの程度なのか?

上の仮説が脆くも崩れ去ったが、原因は他にもあるかもしれない。そもそもBTCは土日にどの程度動いているのか調べてみた。

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どうやら元々日曜はボラティリティが低いようである。かなり前に「ボラティリティと乖離率は関係が無い」との結論が出ているが、ここでは相対的にボラティリティの高い月曜の方が乖離率が大きい、という話が出てきた。両者はボラティリティの計算方法が異なるのでこういった結論となったが、どうにもBTC側はUSDJPYの動向をあまり意識していない、というオチに変わりはなさそうである。

 

最後に

何もまともな結論は出なかったが、市場の歪みはかなり発生している印象を受けた。今回は対USDと対JPYに絞った分析だが、一応EURGBPもあるはずなので(国内で普通に取引できるのかは不明)、まだ分析する余地はありそう。気が向いたら続編を書きます。