デリバティブ偏愛家の日記

弱小投資家の相場備忘録

銀行の運用部門のお仕事 第1話「置き場の無い黒電話」

最近物忘れが凄い。暇だったので、セン短のHPにある用語集(市場取引用語解説|セントラル短資株式会社)を見ていたのだが(どんだけ暇だとそこに辿り着くんだよ、という指摘はある)、短資会社に勤めていた訳ではないが色々と懐かしい。ほとんどの市場部門の業務が機械に置き換えられていく中、自分の銀行での経験も -良い意味ではないがー 多少は貴重になっていくのであろうから、当時の話を何回かに分けて書き残しておこうと思った。

 

前置き

まず私自身の経歴だが、新卒で入社したのは為替証拠金取引会社(FX業者)で、銀行には中途で入っている。FX業者はIT化が非常に進んでいた。人間のトレーダーは一人もおらず、淡々とアルゴリズムに従って顧客にレートを提示、自社のポジションのリスク量を見ながらカバー先に全自動で反対売買を飛ばしていた。そのため、所謂"トレーディングルーム"は存在せず、自分がいた部署は傍から見れば市場業務をやっているとは思われないような、ごく普通のオフィスであった。

そんな環境に慣れ親しんだ私であったが、金利デリバティブに関する業務が出来る、とのことで銀行に転職することにした。メガではないし、地域密着型の地銀でもない、微妙なポジションの銀行であった(この時点でかなり絞られてしまうが)。ここで書くことは100%その銀行での体験なので、メガや外銀とは全く世界が異なることはご了承いただきたい。

 

夢の一人一台Bloomberg

初出勤の日までどういった部屋なのか、全く情報は無かったが、意外にも大量のモニターが並ぶ本格的なトレーディングルームに自席が用意されていた。ひたすらテレビで垂れ流されるCNN。金融業界お決まりの入社直後はとりあえず色々なシステムのアカウント作成とパスワードの設定。これ他の業界はどうなんだろうか。

これまた全く期待していなかったが、一人に一台Bloomberg端末が用意されていた。リーマンショック後の不景気で、月20万もする一人一台のBloombergを諦めた金融機関が増えたというのに有り難い話だ。これが後に最強の暇潰しアイテムになる。

 

謎の黒電話

全ての席の卓上に、不自然な黒電話が置かれていた。何故か「受話器置き場」(正式名称不明)が無い。とても居心地の悪そうに転がっている"それ"こそが、この業界で使われるスタンダードな電話だった。

(画像は拾ってきたものだが、製品としてはこれ。ただ、弊行のは横幅が半分)

私「あの、これの受話器の置き場は…?」

上司「うん、まあそこら辺に置いておくものだよ」

私「あ、はい(ファッ…!!)」

 

…やはり、これに置き場は無いらしい。

 

意外と便利な黒電話

見た目こそ圧倒的にレトロだが、これがなかなか優れ物である。まず画面が付いているが、ここに登録した連絡先の一覧が表示されているので、横にあるボタン一つで発信できる。なので、証券会社の担当営業さんの番号をひたすら登録しておく。

また、この写真では分かり難いが受話器に部屋の電気スイッチのような、これまたレトロなスイッチが付いており、これを押すと、向こうからの音声は聞こえるが、こちらからの音声はシャットアウトできる。電話してきた証券会社が出したプライスが糞みたいだった時にブツクサ言うのに使う。スイッチを押し忘れていると悲劇なので入念にチェックしたい。

あと、自席以外にかかってきた電話を自席の電話で取ることができる。トレーディングルームでは常識なのか、部署ではなく、各担当者に直通の電話番号が与えられる。なので、一番下の若者がとりあえず部署にかかってきた電話に出て、上司に代わる、という件が存在しない。これは当時の私にとっては革命的だった。上司が空席の時だけ自席で電話を取れば良いだけ。素晴らしいと思いませんか?(電話嫌いなところだけイマドキの若者感を出していく)

これ以外にも、ひたすら部屋の片隅で垂れ流されているCNNをこの電話から聴くことも出来る。本来はマーケットに影響のある国際政治に関する緊急ニュースを自席で聴くことを目的に考えられていたのだろうが、実際にはサッカーやラグビーの試合の中継が流れていた以外に使用実績は無かった。確かにFX業者にいた時に置かれていたテレビもロンドンオリンピックを見た以外記憶に無いので、まあどこもそんなものだろう。ちなみに普段全くスポーツを見ないが、ロンドン五輪期間中は全てニューヨーク番(23時出社、翌7時退社)だったので、人生で最もしっかりと見たオリンピックとなった。どころか卓球の石川佳純選手のロンドン五輪に賭ける思いを特集したドキュメンタリーまで見たので(無論職場で)、さながらメイキング映像まで見た映画レベルで見ている。今更ながら何しに会社に行っているんだ。

 

次回は仕事の内容について書こうと思う。