デリバティブ偏愛家の日記

弱小投資家の相場備忘録

投資対象としてのビットコインを考える

今更感が半端ないが、話題のビットコインについて投資家目線で考えてみる。仮想通貨の将来展望について語ったり、「サルでも出来るビットコイン必勝法」といった記事ではないのでご了承願いたい。また、仮想通貨全般に関して私自身は素人なので、記事に誤りがあった場合、指摘いただけると助かる。

 

大まかな印象

様々な主要通貨との交換レートが設定され、インサイダー取引規制が無い?ので、投資対象としてはほぼ普通の為替と考えて良いのでは。なのでここでは基本的にFXとの差異をメインに見ていこうと思う。また、日本の個人投資家が取引する前提で考えるので、取引業者(仮想通貨界隈では取引所)は日本のものを想定している。

 

取引条件

取引可能な時間・曜日

24時間取引可能なのはFXと同様だが、ビットコインは土日の休みが無い。「やった!土日も取引できる!」と考えるか、「土日もチャート見ないといけないのか…」と考えるのは人それぞれ。世界的に見ても土日に普通に取引可能な金融商品は少ないので貴重な存在ではある。

反面、FX業者にいた側の立場からすると、土曜朝にサーバのメンテナンスをして日曜は休み、というサイクルを作れないので、業者としては大変だろうな…という印象。エンジニアの方々お疲れ様です。

 

サーキットブレーカー

株や先物ではお馴染みのサーキットブレーカーだが、FXには基本的に存在しない。"基本的に"と言うのは、制度上は存在しないが、仮に凄まじい暴落、暴騰があった場合、各国の中央銀行が為替介入をするなり、レート変動に対して言及するなり、変動を抑えるために何かしら行動を起こすので、結果的にブレーキがかかることがある、という意味である。

ここは各社バラツキがあるようで、bitflyerでは「乖離価格での誤発注防止」の意味でこの制度を導入している模様。あくまで世界中で取引されているものであるから、単独の取引所にてサーキットブレーカーを用意しても、結局はブレーカー発動中に他の取引所で暴落していれば意味が無いので、「市場を落ち着かせる」という効果は期待できない。

ということで、誤発注以外では制度上ほぼ機能しない上に、実質的ブレーキ担当の中央銀行が存在しないので、自明だが急変には要注意である。

 

派生商品

現物以外にFX、信用取引先物が存在している。各社名称こそ異なるが、実質的には以下のように整理できる。

先物と信用は似ているが、信用取引は自分がポジションを建てた日からn日後に期限が来るのに対し、先物は業者が指定した日に全員一律で期限が来る、という違いがある。

残念ながら先物に関しては、取引量が少なく、スプレッドが非常にワイドで使い物にならない。個人的には先物フォワードカーブがどうなるのか非常に興味深かったが、期先に至ってはほぼ取引無しなので全く参考にならなかった(フォワードカーブについてはこの先でも触れる)。

 

分析手法

ファンダメンタルズ分析

FXであれば、ドルならアメリカ、ユーロなら欧州の経済指標をチェックしてマクロ経済動向を予測するが、仮想通貨の場合、流通する特定の国家が無いため、伝統的な経済指標だけ見ていても説明ができない動きが多くなる。とは言え、これは完全に印象でしかないがドルや円といった反対側の通貨の価値が大きく動けば、BTCUSDやBTCJPYの価格は動くはずである。なので、反対側の通貨の変動にも左右される、という意味では原油にも近い性質を持つかもしれない。

 

テクニカル分析

テクニカル分析のほぼ全てが「同じ指標を見ている人がいるから機能する」ものであって、「本質的に相場がそのテクニカル指標が示す方向に動く」ものではないことが重要である。現時点で取引に参加している層が普段から株やFXをやっている人たちであれば、同様のテクニカル分析をしているだろうが、そうでない人たちが多いと、機能するはずの抵抗線が機能しなかったりするので、これは興味深い。

 

ボラティリティ

他通貨との比較

仮想通貨の価格変動と言えば、かなりエキサイティングな印象があるが、実際にヒストリカルボラティリティを計算してみた。

f:id:plnjpy:20170919035409p:plain

  • データは2015年5月から直近2017年9月15日まで
  • 各営業日の終値の価格変動率の標準偏差を年率に換算
  • この年率換算は従来の為替に合わせるために1年=250営業日で計算している(そのため365日営業しているBTCJPYは実際には年換算で更に動く)

これはなかなかのボラの高さである。トルコリラが可愛く見えるレベル。ちなみにビットコインの価格データは元々はコインチェック社が提供したもので、Quandlというサービスで取得できる。

www.quandl.com

このQuandlは下の記事でも紹介しているマーケットデータ提供サイトであり、無料で様々なデータが手に入るのでオススメである。

plnjpy.hatenablog.com

 ボラの計算期間のスタートが2015年5月という微妙なタイミングなのは、このサイトで手に入る一番古いデータであったというだけで、深い意味は無い。

 

推移

この記事を書いているのは、まさに中国で仮想通貨の取引所が閉鎖されたり、JPモルガンのCEOが「仮想通貨なんぞ詐欺だ」と言って暴落したタイミングではあるが、まさに今のボラティリティが過去との比較でどの程度の水準かは見ておきたい。

f:id:plnjpy:20170919041057p:plain

元データは先程と一緒だが、ボラティリティは過去60日分を使って計算している。またこれもやや重要だが、ボラを年換算するのに今回は1年=365日を使用している。

現状は流石に高い水準にいるようだ。意外と低い時期は20%付近まで落ちるのもポイントかもしれない。

 

金利スワップ

先物フォワードカーブはどうなるのか?

先程も話に出たが、やはりここが気になる。基本的には為替の場合、短期金利の高い通貨を買い、低い通貨を売れば、金利差が収益となる。株式の場合は配当収入、債券の場合はクーポン収入がある。他には原油の場合は管理コストがかかるのでロングすると支払となり、金は単独で金利収入が無いので、反対売買した為替の短期金利がコストになる。このようなインカムゲインの存在が、先日付の同資産の価格を変化させ、フォワードカーブの形状に影響を与える。

さて、仮想通貨の場合はどうなるのか。為替に近いが短期金利が存在しない以上、金利ゼロの通貨と考えるのが妥当か。ただ、マイニングした人への報酬が存在するのであれば、その分は支払?をしており、若干のマイナス金利かもしれない。この辺りはCMEにビットコイン先物が上場する予定らしいので、そこでマーケットが出来てから再度見てみたいものである。

 

現状の金利設定

驚きではあるが、現状ではレバレッジ取引に関して言えば、各社「スワップポイント」や「日次手数料」としてロングだろうがショートだろうが日率0.04%(年率14.6%)近いコストを請求している。FX対比で言えば、取引時のスプレッド収益が少ない分、スワップで大きく稼ごう、という方針なのだろうか。また、FXのスワップは日々変動しているが、それと異なり、当分一定のようである。

逆に現物で保有している場合は貸出が可能であるが、貸し付け金利は年率5%。事前に設定した期間中は解約できないので、定期預金に近いだろう。

貸仮想通貨サービス | Coincheck(コインチェック)

 

他通貨との比較

ボラ同様に、スワップも比較してみる。

f:id:plnjpy:20170919043322p:plain

レバレッジ取引(先物)はかなり強烈なスワップ支払状態であることが分かる。上述の貸し付けサービスを利用しても金利ではトルコリラに負ける状態。

雑な話だが、そもそも金利ボラティリティは比例するものと考えて良い。返済能力に難のありそうな企業に貸し付ける場合、金利が高く、優良企業の場合は低金利で貸し出せるように、金利は信用リスクの高さに比例している。国家レベルで言えば、トルコは日本と比較して通貨の信頼度が低いため、金利も高く設定されている(逆に信頼度が低いのに金利も低ければ価値が大きく下がってしまう)。通貨の信頼度が低いと、その通貨のボラティリティは高い傾向にある。よって大雑把に言えば「ボラが高い通貨は金利も高い」となる。

例えば年利10%の金利収入があるトルコリラの場合、保有しても年間10%下落までなら金利収入で相殺できる。これが逆にほぼ金利ゼロのユーロの場合、保有しても金利収入で下落を全く相殺できないことになる。長期保有を考える上で金利収入はバッファーとして重要な概念であろう。

そこで本題のビットコインに関して考えると、ボラの高さに対して金利収入が見合っているとは言えない状態である。それこそ仮想通貨の将来性に期待する等の相場観が無ければ長期保有は難しい印象を受けた。実際には価格上昇率が凄まじいので、スワップの支払等、目につかないレベルではあるが。

 

ちなみに

ビットコインのボラが低下した場合にどうなるか。

ここではレバレッジ取引を行う想定で考える。年率14.6%のスワップの支払いがある中、もしもボラが年率14.6%まで落ちてしまうと、年間で利益を出すのがかなり厳しくなる。

ビットコインの価格変動率の確率分布を正規分布と仮定すると(この時点で非現実的、という指摘を受けそうだが、まあ伝統的な金融理論に従ってみよう)、+1σ以上上昇しないと、スワップでの負けを回収できないが、これを超える確率は約16%しかない((100-68)/2=16)。ビットコインにとってボラの高さは生命線かもしれない(勿論本来ボラが下がればスワップの払いも少なくなる…はずである)。